医薬品の流通をサポートしている「医薬品卸」の薬剤師。
「医薬品卸は倉庫作業で気楽そう」
「実際にどのような仕事内容なのか分からない…。」
「給料は高いのかな?」
勤務年数とともに業務量は増えていくが、早くから年収は頭打ち。比較的に楽な業種と言われる医薬品卸への転職を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、医薬品卸の薬剤師がどのような仕事をしているのか分かりやすく解説していきます。
併せて「収入事情」「卸の管理薬剤師は大変なのか」など、医薬品卸の実態を明らかにしていくので興味がある方は必読です。
結論からいうと医薬品卸(MS)で働く場合は営業として働くなら大変ですが、医薬品管理として働くのであれば比較的ゆるい場合が多い。
ただ求人数はあまり多くないので薬剤師向けの転職サイトをうまく活用し求人を探すのが効率的です。
総まとめ
- 医薬品卸の仕事は「管理」がメイン
- 年収はほかの業種の薬剤師よりも低く設定されている
- 医薬品卸の薬剤師が年収700万円を超えるのは難しい
医薬品卸の仕事内容|7つの役割
「医薬品卸ってどんな仕事をしているの?」といった疑問を持つ方も多いようです。
ここでは、日本医薬品卸勤務薬剤師会の資料をもとに、仕事内容を分かりやすくお伝えします。
医薬品卸の仕事は、次の7つに分けられています。
7つの役割 | 仕事内容 |
DI業務 | 医薬品の情報を提供
問い合わせの対応 |
PMS業務 | 医薬品の情報収集・提供 |
薬事管理 | 法律に基づいた販売・商品の取り扱いについての指導 |
品質管理 | 医薬品の温度管理 |
研修 | 検収資料の作成・講師業務 |
本社の薬剤師をサポート | 営業所薬剤師のサポート |
社外との連携 | 都道府県・市町村の窓口との連携
薬剤師会の活動に参加 |
具体的にどのような仕事をこなしているのかを一つずつチェックしてみましょう。
DI業務
DI業務とは、取引先の医師・薬剤師からの質問に答える仕事です。
新薬の情報や流行している疾患、話題性の高いことなどさまざまな質問を受け付けます。
そのため、医療関係の書籍や雑誌、論文などで常に最新の情報を収集する必要があるのです。
医師や薬剤師からの質問に答えられない場合は、メーカーへ問い合わせて確認するケースも。
PMS業務
PMSは、医薬品が臨床試験を終えて販売開始されたあとに行う市販後調査のことです。
新薬が販売されたあとに医薬品の有効性・安全性を注意深く追跡調査をします。
製薬会社から依頼された医薬品情報の伝達、文書の配布などを行う業務です。
薬事管理
法律に基づいた商品販売・取り扱いができるよう指導をします。
法律で定められている販売記録の管理を行う責任重大な業務です。
取引先が無許可販売を行っていないかまで「許可状況」を徹底的に確認するのも業務のひとつ。
品質管理
品質管理の業務は、温度・期限・衛生面の3つを管理します。
品質管理業務 | 特徴 |
温度管理 | 倉庫内の温度の確認・管理
配送時の温度管理指導 |
期限管理 | 使用期限の確認 |
衛生管理 | 商品が保管されている倉庫内の衛生管理 |
製薬会社が製造した状態の品質を維持して、医療機関へ運ぶ重要な役割を果たします。
商品を1つ1つ把握して、品質を保つ必要があるので正確さ・丁寧さが医薬品卸の薬剤師に求められるスキル。
研修
医薬品卸の薬剤師は、物流社員や内勤者へ医薬品の基礎知識について研修をします。
具体的には、疾患や医療、薬事関連、商品の保管・品質管理など幅広い分野の研修をするので事前に情報のインプットが必要。
物流社員と内勤者以外に、薬剤師への研修を担うこともあるので、より専門性の高い知識を身につけておかなければなりません。
本社の薬剤師をサポート
医薬品卸の薬剤師が、本社で働く薬剤師をサポートすることもあります。
おもに、薬事管理業務やDI業務のサポーターとして役割を果たすことが多いです。
取引先の医療機関に向けて商品情報の資料を作成したり、営業活動の支援をしたりするのでデスクワーク中心となります。
社外との連携
保健所の立ち入り検査時に、管理薬剤師が営業所の管理者として対応します。
災害時の医薬品供給に関して、都道府県や市町村の窓口と連携し、保管管理を担う重要な役割です。
また薬剤師会が実施する地域の活動に参加するのも業務内容の一つ。
医薬品卸の薬剤師は年収が低い?
医薬品卸の薬剤師は、想像していた以上に担当する業務が多く、責任も重大ですよね。
「当然、ほかの業種より高年収でしょう。」と予測される方が多いはず。
しかし医薬品卸の薬剤師は年収400~600万といったデータが出ており、比較的に低めに設定されています。
年収700万円は、超えないので高年収を希望している薬剤師の方は、ほかの業種を選んだ方がいいでしょう。
画像引用:マイナビ薬剤師
管理薬剤師であっても年収430~460万円と低めに設定される求人が多いことが分かりました。
とはいえ、ほかの薬剤師と比較すると年収が低い印象があるかと思いますが、一般の会社員と比較すると高年収です。
薬剤師の平均年収に関しては下記の記事をチェック!
医薬品卸の薬剤師として働くメリット
医薬品卸の薬剤師として働くメリットは次の4つです。
- 残業が少ない
- ほかの業種と関わることができる
- 調剤業務や服薬指導がない
- 福利厚生が充実している
上記のメリットを見て、魅力に感じる方は医薬品卸の仕事が向いているかもしれません。
ひとつずつ見ていきましょう。
残業が少ない
医薬品卸の薬剤師は、残業がほとんどなく定時で退勤できます。
薬剤師業界は、「仕事量が多く残業ばかり…。」と疲労困憊している薬剤師の方も少なくありません。
とくにドラッグストアは24時間365日営業の店舗が多く、深夜勤務や土日出勤を余儀なくされることも。
一方、医薬品卸は残業がないうえに、土日祝はお休みできるので主婦層にも人気が高い業種です。
ほかの業種と関わることができる
医薬品卸の薬剤師は、取引先の医師や薬剤師、企業に勤める物流社員や内勤者、市町村の窓口など幅広い業種と関わりを持つことができます。
コミュニケーション能力が高く、人と接することが好きな人には向いている業種といえるでしょう。
また医師や看護師など医療従業者へ商品の説明や新薬の情報を提供するため、やりがいを感じる薬剤師の方も多いようです。
調剤業務や服薬指導がない
医薬品卸の薬剤師業務は、調剤業務や患者さんへの服薬指導はほとんどありません。
薬剤師の方によって捉え方は異なりますが、上記の業務が苦手な人には魅力に感じるでしょう。
調剤薬局で働く薬剤師の基本となる業務がない点は、メリットの一つといえるのかもしれませんね。
そのため「調剤薬局で数年働いて調剤業務に向いていなかった」と企業の卸に転職する薬剤師の方が多いです。
福利厚生が充実している
薬剤師を配置できるということは、上場している大手企業である可能性が高いです。
そのため卸の薬剤師は、さまざまな充実した福利厚生を受けられるでしょう。
具体的には、退職金や育児休暇、有給休暇などの基本的な福利厚生の充実はもちろんのこと、ディズニーランドや宿泊施設の割引なども。
個人運営の薬局では考えられないような福利厚生が整っている企業も多いです。
医薬品卸の薬剤師として働くデメリット
医薬品卸の薬剤師として働くデメリットは、次の4つです。
- 異動を命じられる
- 給料が低い
- 転職しにくい
- 時間の余裕を持て余す
ではひとつずつ見ていきましょう。
医薬品卸として勤める前に、欠点を知っておけば転職後の後悔を避けられるはずです。
異動を命じられる
大手企業であれば多くの営業所を構えており、異動が余儀なくされる可能性もあります。
とくに医薬品卸の薬剤師は全国的に人手不足ですので、新人社員が入社せず、代わりに異動せざる負えない状況も。
企業によっては、入社時に「全国転勤を希望しない」と条件を伝えられますが、その場合年収が下がってしまう傾向にあります。
家庭を持つ人であれば、気軽に転勤ができないので入社時に異動の有無を確認しておきましょう。
給料が低い
医薬品卸の薬剤師は、業務内容が多いわりに給料が低いということが最大のデメリットです。
薬剤師の業種は、調剤薬局・ドラッグストア・病院・製薬会社の4つに分類されます。
そのなかで病院勤務の薬剤師が最も年収を低く設定されていますが、医薬品卸の薬剤師はそれよりも低いです。
通常、管理薬剤師になれば基本給に3~6万円上乗せされるのですが、医薬品卸の場合は1万円前後という声も。
とはいえ、ほかの薬剤師に比べると年収が低く感じますが、400~600万円が相場で残業がない職場ですので、一般職の人からは羨ましがられるでしょう。
転職しにくい
医薬品卸の薬剤師は、転職しにくい傾向にあります。
というのも、医薬品卸の薬剤師は調剤業務や服薬指導をしておらず、薬剤師としての業務経験が少ないからです。
そのため医薬品卸から調剤薬局やドラッグストアへの転職は難しいとされています。
また医薬品卸から同業の医薬品卸へ転職を希望される方もいますが、求人数が少ないため転職活動がスムーズにいきません。
医薬品卸の薬剤師として長く活躍するのもステキなことですが、一度、服薬指導や調剤業務の経験をしてことも今後のためになるかと思います。
管理薬剤師でなければ、パート薬剤師としてドラッグストアや調剤薬局で一時的に働くことができます。収入アップに繋がるだけでなく、薬剤師としてのスキルも高められるので体力に自信がある薬剤師の方におすすめです。
時間の余裕を持て余す
仕事内容が多いように思える医薬品卸の薬剤師業務。
実際には、日々こなす業務量は少なく、「半日ボーっとして過ごした」「5時間以上仕事がなかった」という日もあるのだとか。
基本的に「管理」が中心の仕事ですので、テキパキと業務をこなせば午前中に仕事が終わってしまうこともあるのです。
「時間が余り過ぎて薬剤師としての勉強をしているが、現場で実践をしていないので自信がもてない」といった悩みも。
- 薬剤師としてスキルアップしたい
- マネジメント業務も挑戦したい
と考える向上心の強い人は、医薬品卸業界では物足りないと感じるかもしれません。
ドラッグストアの医薬品卸|大手ランキング5選
「医薬品卸の会社はまったく知らない」という方も少なくないでしょう。
薬剤師にとって、医薬品卸売会社の社名は聞きなれないかもしれませんね。
ここでは、大手の医薬品卸売会社をランキング形式でまとめました。
ランキング | 会社名 | 平均年収 |
1位 | メディパルホールディングス | 783 |
2位 | アルフレッサホールディングス | 726 |
3位 | コーア商事ホールディングス | 701 |
4位 | スズケン | 662 |
5位 | PALTAC | 637 |
参照:業界動向
上位にランクインしている大手の会社であれば、調剤薬局に勤める薬剤師にとって馴染みがあるかと思います。
これから医薬品卸の薬剤師を目指す方は、経営が安定しており研修制度が充実しているので、上記の会社に目星を付けておきましょう。
医薬品卸の薬剤師に関するQ&A
医薬品卸の薬剤師は、ドラッグストアや調剤薬局で働く薬剤師よりも圧倒的に少ないので、謎が多い部分もありますよね。
今回は、医薬品卸の薬剤師に関するよくある質問をQ&A形式でまとめていきます。
- 医薬品卸の管理薬剤師は大変?
- 医薬品卸の薬剤師は出会いが多いの?恋愛事情が気になる
- 病院で薬剤師として働きながら卸の仕事は兼業できる?
気になる項目からチェックしてみてくださいね。
医薬品卸の管理薬剤師は大変?
A.医薬品卸の管理薬剤師はほかの業種ほど大変ではない
もちろん職場によって異なるので断言できませんが、医薬品卸の管理薬剤師は時間に追われながら仕事をこなすといった場面がほとんどありません。
先述した通り、「5時間以上やることがない」「半日、何もしなかった」といった薬剤師のリアルな声も。
一方、調剤薬局やドラッグストアは、業務が多く目が回るほど大変な日々を送っている管理薬剤師がほとんどです。
同じ管理職でありながら大変さは大きく異なるので、「気楽に働きたい」とお思いの方は医薬品卸への転職を検討されるようです。
調剤薬局など管理薬剤師は高い給与とですが責任はかなり思いのでやめたいと思う方も少なくありません。
医薬品卸の薬剤師は出会いが多いの?恋愛事情が気になる
A.医薬品卸の営業担当者であるMSは、異性の出会いが多いです。
調剤薬局、ドラッグストアなど女性の割合が多く、「出会いがない」と悩む方は多いですよね。
そのような環境に医薬品卸の男性が職場へ現れて恋愛対象として意識する女性スタッフも少なくないとのこと。
医薬品卸は仕事上、ほかの業種の人と関わる機会が多いので、「出会いがない」といった悩みはなさそうです。
病院で薬剤師として働きながら卸の仕事は兼業できる?
A.管理薬剤師でない場合に限り兼業できます。
病院やドラッグストア、調剤薬局で働きながら医薬品卸の仕事を両立させることは可能です。
しかし、医薬品卸は基本的に一人薬剤師として雇われることが多く、「管理薬剤師」として働きます。
法律上、管理薬剤師は兼業が認められていないので、ほかの職場で働くことはできません。
医薬品卸の職場で管理業務をしていない一般の薬剤師である場合のみ、兼業が認められます。
※企業によって副業が禁止されているケースもあるので、就業規則をよく読んでから兼業をしてくださいね。
まとめ:医薬品卸の薬剤師は無理なく働ける
医薬品卸は、メジャーな働き方ではないので具体的な業務内容を認知していない人も多いです。
仕事内容は「品質管理」がおもな業務で、ハードワークではないことが大きな特徴。
残業はほとんどなく福利厚生が充実した企業で働くことができるので、家庭を持つ人やワークバランス重視の薬剤師に人気です。
無理なく働くことができるので、「今の仕事は忙し過ぎて目がまわりそう…。」と悩む人は、医薬品卸への転職を視野に入れてみてはいかがでしょうか?
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