管理薬剤師って大変すぎ…辞めたい理由と退職する前に考えたい4つのこと

「管理薬剤師をしているけれど、もう辞めたい……」

「管理薬剤師を辞めたい！でも、辞めた後の進路って？」

管理薬剤師は調剤薬局の責任者という要職ですが、責任の重さや忙しさなどの問題から、辞めたいと考える管理薬剤師は少なくありません。

管理薬剤師を辞めたいと思っても、実際にはなかなか上司に切り出しづらかったり、辞めた後の生活を考えたりすると実際に辞めるという決断はしづらいもの。

そこで今回は、管理薬剤師は辞めたくなる理由と、実際に辞める前に考えるべきこと、辞めた後の選択肢などを解説します。

この記事をお読みになることで管理薬剤師を辞めるべきか判断でき、自分の理想の働き方を実現できるようになるでしょう。

あなたの給与が責務と待遇が見合っていない場合は同じ薬局で管理薬剤師を続けるのは正直しんどい。転職サイトなどを使いあなたの希望する待遇で納得の行く職場で働くのも1つの解決策です。

薬剤師向けの転職サービスを使うことであなたの条件にあった待遇や環境の薬局を効率的に探すことができるでしょう。

管理薬剤師を辞めたい理由

管理薬剤師を辞めたいと考える理由として、次の6つが挙げられます。

人間関係が悪い

管理薬剤師は他のスタッフを管理する立場であるため、反抗的なスタッフや、指示を聞かず同じ間違いを繰り返すスタッフなどがいる場合にはストレスを抱えやすくなります。

厳しく指導しなければならない場面も時には必要であり、結果として他のスタッフから敬遠される状況もあるでしょう。

また、社内の上役との軋轢（あつれき）や、処方箋を応需している病院の医師が疑義紹介に耳を貸さないなどの問題があると、人間関係でストレスを強く感じます。

自分のスキル・経験に不安がある

実務経験1、2年程度の新米薬剤師でも、会社の方針で管理薬剤師にされる場合があり、自分のスキルに不安を感じながら管理薬剤師として働くうちに「管理薬剤師をやめたい」と考える方もいます。

管理薬剤師になるために必須の要件はないため、会社によっては勤務年数の長い正社員を管理薬剤師にするケースもあるのです。

とくに薬剤師の不足している会社では、その傾向が見られやすいでしょう。

自分はまだ現場の責任者を務めるほどの経験がなく、周りのパートスタッフなどのほうが勤続年数が長かったり「現場を分かっている」ように見えたりする場合など、管理薬剤師を辞めたいと感じやすくなるかもしれません。

残業が多い・休めない

管理薬剤師は店舗を管理する立場であるため、他のスタッフよりも勤務時間が長くなりがちです。管理薬剤師の業務内容は通常の調剤、服薬指導、薬歴記載に加えて、以下のように多岐に渡ります。

通常の薬剤師としての業務以外の内容も多いため基本的に労働時間は長くなり、残業や休日出勤をせざるを得ない場合もあります。

管理薬剤師が薬局長を兼ねている店舗も多く、その場合はマネージメント業務の割合が多くなります。

また、店舗の風土として有給を取得しづらい状況が定着している場合、他のスタッフが有休をとっていないければ管理薬剤師だけが有給を取るのは困難と言えるでしょう。

管理薬剤師の残業に残業代がつくかどうかは会社次第となっています。想定される残業時間分の残業代を固定給の中にあらかじめ組み込む「見込み残業」を採用している会社では、管理薬剤師はいくら残業しても残業代は加算されません。

また、休日夜間の携帯当番（オンコール当番）に手当がつかない薬局もあり、拘束時間が長くて忙しいわりに給料が上がらないというジレンマにつながる恐れがあります。

給料・管理薬剤師手当が少ない

基本的に、管理薬剤師は手当てが付くので一般の薬剤師よりも年収が高くなりますが、会社によっては手当てが1～2万円程度と低い場合があります。

管理薬剤師手当は月5万円前後が相場ですが、1万円～10万円程度と薬局によってかなりの差があり、中には管理薬剤師手当のつかない薬局もあるといいます。

管理薬剤師になると賞与や昇給額も一般薬剤師よりも高くなる傾向がありますが、それも会社に寄るので一概には言えません。

責務の重さに見合わず年収が伸びなければ、管理薬剤師を辞めたいと思うのも無理はないでしょう。

参考に、管理薬剤師と一般薬剤師の平均年収を店舗数ごとに比べた薬キャリAGENTのデータを引用します。

店舗数別に見る管理薬剤師と一般薬剤師の年収

	管理薬剤師の平均年収	一般薬剤師の平均年収	年収差
全体平均	¥7,518,472	¥4,738,925	¥2,779,547
1店舗	¥8,250,804	¥4,449,514	¥3,801,290
2～5店舗	¥8,053,307	¥4,721,781	¥3,331,526
6～19店舗	¥7,338,326	¥4,580,168	¥2,758,158
20店舗以上	¥6,802,625	¥4,891,469	¥1,911,156

引用元：徹底調査！薬剤師の平均年収比較｜薬キャリ職業ナビ

管理薬剤師手当を含めた年収が、業務量や責務の重さに見合っていると感じられるかどうかが、「辞めたい」と思うかどうかの一つの基準ともなっているようです。

責任の重さに耐えられない

管理薬剤師はその店舗の責任者であるため、調剤過誤が起きたときに責任を問われる場合があります。例として、2011年に起きたウブレチド事件では、管理薬剤師・薬局開設者が書類送検されました。

令和3年8月1日に施行された改正薬機法では薬局ガバナンスが強化され、薬局開設者と管理薬剤師の責務の所在がより明確化されることとなりました。

薬局の管理薬剤師は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように薬局開設者に必要な意見を述べなければなりません。書面で意見を述べ、書面の写しを3年間保存する必要があるとされています（改正薬機法施行規則11条2項第2号）。

ミスがあったからといってただちに刑事責任問われるわけではありませんが、管理薬剤師としての責任の重さは理解しておかなければなりません。

法的な責任が生じるほどの事態でなくても、ミスがあれば店舗の代表者として患者宅に謝りに行く必要はあるでしょう。

処方箋応需枚数が多い店舗では、取り扱う医薬品数や患者数が増えるため、よりいっそう責任の重さを実感しやすいと言えるかもしれません。

管理薬剤師は薬事に関わることの副業できない

管理薬剤師は薬事関連の副業・兼業が禁止されています。

医薬品医療機器等法 第7条の3の定めにより、薬局の管理者は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない（ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。）とされているため、管理薬剤師は自身が勤めている薬局以外では薬事に関わる実務についてはいけません。

同じ会社内の他店舗にヘルプに入れないのはもちろん、他のドラッグストアや調剤薬局で薬剤師として副業することができないのです。

収入アップやスキルアップを目的に副業を考える薬剤師にとっては、薬事関連の副業禁止は痛手と言えるかもしれません。

管理薬剤師でも「薬剤師免許を使用しない薬事以外の副業」であれば行うことが可能なので、副業をしたい場合は他分野での副業を選びましょう。

なお、薬局所在地の都道府県知事等から兼務許可を受けた場合には、例外的に管理薬剤師が自分の薬局外で薬事関連の業務を行うことが可能です。

これはあくまでも「例外」であり、非常勤の学校薬剤師や、夜間休日の輪番制の調剤業務、へき地で管理薬剤師の確保が困難な場合などに限っての兼務許可となります。（参考：医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第７条第３項に規定する薬局の管理者の兼務許可の考え方について ｜厚生労働省）

退職する前におさえておきたい4つのポイント

管理薬剤師を辞めたい！と思っても、実際に上司に伝えたり退職したりする前に、きちんとおさえておきたいポイントが4つあります。

管理薬剤師を辞めたい理由を明確にする

まずは自分がなぜ管理薬剤師を辞めたいのか、理由を明確にしましょう。

「激務続きでさまざまな不満が溜まっている」という方も、具体的に問題点を把握する必要があります。

辞めたい理由ははっきりしないまま転職したり一般薬剤師になったりしても、結局また似たような問題を繰り返してしまうからです。

また、曖昧な理由で話を切り出すと、上司から改善策を提案されて強引に引き留められるリスクがあるので注意しましょう。

上述した6つの「辞めたい理由」を参考に、自分の場合の問題点を具体的に洗い出してみましょう。

転職の前に問題解決を試みる

職場に潜む問題点を具体的に洗い出したら、次はその問題を解決する方法を考えて問題解決に取り組みます。

実際に管理薬剤師を辞めなくても、今の会社内で解決できる問題点もあるかもしれません。

新しい過誤防止システムの導入を提案したり、会社内の別店舗で管理薬剤師になったりするなど選択肢を考慮して、問題解決を図りましょう。

問題点を上司に相談し、解決策を模索するのも立派な選択肢です。

しかし、残念ながら問題が解決する兆しが無ければ、転職も含めて今後の働き方を検討する必要があります。

管理薬剤師の求人は多いので、転職先を吟味すれば高年収を維持したまま他の調剤薬局に転職することも可能です。

管理薬剤師を辞めてはいけないケースとは？

「現状では問題が解決できず、やっぱり管理薬剤師を辞めたい…」と思っている場合でも、管理薬剤師を辞めてはいけないケースが1つだけあります。

それは、今の会社でさらに昇進を目指しているという場合。

今勤めている会社で管理薬剤師よりさらに上の役職に昇進したい場合には、もちろんその会社を辞めてはいけません。

辞めたい理由や店舗の課題を自身で解決する必要があり、解決能力は昇進できるか否かの分かれ目となることでしょう。

「この会社にこだわりはないけれど、管理薬剤師としての高収入が捨てがたいので辞められない…」という方は、自分の心身のストレスと金銭的なメリットを見比べて、金銭が勝る場合は辞めずに続けるのも一つです。

しかし、金銭だけがポイントなのであれば高年収の職場を選んで転職するのも現実的な選択肢と言えます。

管理薬剤師の経歴は転職の武器になる

管理薬剤師という経歴は、転職を進める際に有利です。ただ肩書きとして有効なだけでなく、実際に経験した管理薬剤師業務は、次の職場で活かすことができるためです。

転職先で一般薬剤師になる場合でも、管理薬剤師の経歴があれば採用が有利になりやすく、年収交渉も進みやすい傾向があります。

管理薬剤師を辞めたあとの進路

管理薬剤師の立場を辞めた場合、今の会社にとどまって働くか、別の会社に転職するかを選ぶこととなります。休職期間を取る、薬剤師以外の職種にチャレンジするなどの選択肢もあり得ますが、ここでは薬剤師として働くケースに絞って紹介しましょう。

同じ会社で働く

同じ店舗の一般薬剤師になる場合は、現場の雰囲気やルールなどをよく理解できているので体力的な負担は少ないですが、一概におすすめとはいえません。
前管理薬剤師という立場から、後任の管理薬剤師をサポートせざるを得ず、管理薬剤師手当ももらえないのに業務多忙になる恐れがあるためです。

また、周りのスタッフから「管理薬剤師を辞めた人」というレッテルを張られると、一種の気まずさを感じる場合もあるでしょう。

他店舗に異動して一般薬剤師・管理薬剤師になるという場合は、会社の経営方針をすでに把握できており、配属先店舗の事情も情報収集しやすいので、働きやすいかもしれません。

配属先でのルールを新たに覚え直すだけで済むので、転職よりもハードルが低いと言えます。自分が「管理薬剤師を辞めた理由」と照らし合わせ、配属先店舗に問題が無ければ管理薬剤師になるのも有効です。

別の会社に転職する

現職の経営方針や給与体系などに不満があったり、他店舗異動で問題が解決できなかったりする場合には、心機一転、違う会社に転職するのも有効です。

転職直後は新しい会社の経営方針に馴れなかったり、周りのスタッフとのコミュニケーションに疲れたりすることもあるかもしれませんが、時間が解決するでしょう。

どんな職場で、どんな条件で働きたいかのビジョンを明確にすることで、転職後の働き方の可能性を広げることが可能です。

失敗しない転職の方法

調剤薬局の求人情報は、その薬局のホームページや実店舗、あるいは転職サイトなど、さまざまな場所で見かけることができます。

しかし、選択肢があふれているからこそ、自分に合った職場を吟味しなければなりません。

失敗しない転職のコツは「転職サイトなどで徹底した情報収集」「職場見学で現場を吟味」「現職をスムーズに退職」の3つです。順番に見ていきましょう。

転職サイトに登録

管理薬剤師を辞めて、今の調剤薬局も退職しようと思ったら、早い段階で転職サイトに登録するのがおすすめです。

転職先の情報収集は自分一人で行うには限界があるため、効率的に求人をチェックするには転職サイトの活用が便利です。

2〜3社に登録することで、自分の条件に見合った求人を見つけやすくなり、相性の良いエージェントとも出会いやすくなります。

登録時に重要なのが、「管理薬剤師の経験がある」と伝えること。先ほどお伝えした通り、管理薬剤師の経験は転職に有利に働くためです。

また、薬剤師以外の仕事に興味があるのであれば薬剤師専用の転職サイトやエージェントではなく、一般企業の転職サイト・エージェントを使ってみるのもおすすめ。

当サイトでは一般の転職についてはあまり情報を掲載していません。

もし詳しく知りたい方は「じょぶおたく」のおすすめの転職サイト・転職エージェント10選！という記事を読むことで後悔しない転職活動をすることができるでしょう。

職場見学で見極める

良さそうな求人に出会っても、求人票だけを見て転職を決めてはいけません。現場の雰囲気や、スタッフたちの実際の働き方、過誤防止システムの運用などについて自分の目で見極める必要があります。

そのためにおすすめなのは、一番忙しい時間を見学させてもらうと言う方法。

なぜなら、忙しい時間帯を見ることで、実際に自分が働く時の激務の具合がイメージでき、現場スタッフの連携や調剤環境に問題ないかどうかを確認できるからです。

暇でのんびりしているときと慌ただしいときとでは、現場の顔は大きく異なることでしょう。

具体的には、薬剤師転職サイトのエージェントに「一番忙しい曜日・日時に見学したい」という旨を伝えることで、見学交渉が可能です。

一般薬剤師として入社しても、将来的に管理薬剤師の役職を打診される可能性はありますから、今後この職場で管理薬剤師を任されても問題ないかどうかを十分にチェックしましょう。

退職は早めに申し出る

転職先での勤務開始日は余裕を持って設定し、現職の退職は早めに申し出るように気をつけましょう。

法律上は2週間前でも可能とされてはいます、管理薬剤師の場合は2週間での退職はほぼ不可能です。

管理薬剤師は管理職であるため引き継ぎも多く、後任の人事に影響するため遅くとも退職希望日の2か月前には退職希望の旨を伝える必要があります。現職の就業規則もしっかり確認しておきましょう。

管理薬剤師は重要な役職であるため、強引な引き留めにあったり、退職を拒否されたりする場合があるので余裕を持った退職準備が必要です！

例えば地域体制加算の算定基準として、管理薬剤師には保険薬剤師5年以上の薬局勤務経験があり、その薬局に1年以上在籍していることなどが挙げられます。

あなたが管理薬剤師を辞めることにより加算の算定要件を満たさなくなる恐れがある場合は、容易には管理薬剤師を交代させてもらえないかもしれません。

しかし結論を言うと、労働者には退職の自由があるので辞めることが可能です。退職せざるを得ない理由を、はっきりスマートに伝えるようにしましょう。

引き留めにあっても、退職の意向が決まっているのならばきっぱりと断る方が安全です。

退職を申し出た時点で、会社経営陣のあなたへの信頼は落ちているためです。

優柔不断にとどまっていても、もはやメリットはほぼ得られません。転職して心機一転し、新しい職場で活躍しましょう。

まとめ

以上、管理薬剤師を辞めたくなる理由と取るべき選択肢について解説しました。

勤務先選びには、収入だけでなく、自分が安心して働ける環境かどうかの吟味も欠かせません。

管理薬剤師を辞める場合も、他の調剤薬局で再び管理薬剤師になる場合も、自身に合った理想的な環境を選んでくださいね。