薬剤師が大学院に進学するメリット・デメリット

※本ページはアフィリエイト広告が含まれています。   ※口コミ・評判に関しては調査会社への依頼や公式サイトから一部抜粋して掲載しています。

薬剤師を目指すのであれば、6年制の大学課程を得て就職するのが一般的です。しかし、薬学生の中には就職せずに「大学院への進学を考えている」という学生もいるでしょう。

ただ、大学院に進学する意味やその後の進路や就職先を見据えずに、なんとなく大学院にいってしまうと必ず後悔します。

そこで本記事では、薬剤師が大学院に進学するメリット・デメリットを解説していきましょう。
また、大学院卒業後の具体的な進路なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧下さい。

この記事で分かる項目は以下の通りです。

この記事で分かること

  • 薬学部から大学院へ進む方法
  • 薬剤師が大学院へ進むメリット・デメリット
  • 大学院卒業後の就職先
目次

薬学部には2種類ある

薬学部の種類

まず、把握しておきたいのが薬学部には2021年現在で6年制と4年制の2種類の学部があるのでいう点です。

以下では、この2つの学部の違いについて解説していきましょう。

薬剤師の養成を前提とした6年制

6年制の薬学部は、薬剤師になることを前提とした学部です。

この6年制の課程を修了することで、薬剤師国家試験の受験資格を得ることができます。

また、卒業することで6年分の教育の学士号を取得することができるのが特徴です。

つまり、日本で薬剤師になるためには必ずこの6年制の薬学部を卒業する必要があります。

学士号の取得が可能な4年制

4年制の薬学部は、6年制と同じく薬学の知識や生命科学などを学んでいきます。

しかし、同じ薬学部を卒業しても4年制の薬学部に関しては薬剤師国家試験の受験資格は与えられません。

なぜなら、4年制の薬学部は薬剤師になるための学部ではなく「薬学に関する学士号」を取得するための学部だからです。

4年制の薬学部を卒業した後の進路は、製薬会社の研究職や公務員など必ずしも薬剤師免許が必要でない職種に就職することが可能になります。

ただ、研究職や公務員は薬剤師免許を取得していても難しく狭き門です。

そのため、4年制の薬学部を卒業した学生の多くは薬剤師国家試験の受験資格を得るために2年制の大学院に進学し、薬剤師を目指す場合がほとんどでしょう。

薬学部の大学院へ進む道

大学院の種類

ここまで、2種類の薬学部についての解説をしてきました。

では、それぞれの薬学部を卒業した後の大学院へ進む道を見ていきましょう。

6年制の場合

まず、6年制の薬学部を卒業後の大学院課程は4年制です。

4年の大学院課程を修了すると大学院の「博士号」を取得することができます。

この過程では、基本的な薬学における研究や論文の作成が主な内容です。
また、薬剤師として大学病院などの臨床現場で実習を行う場合もあります。

そのため、講義を受けたりすることはほとんどないでしょう。

このコースは、6年制の薬学部+4年制の大学院課程で実に10年もの歳月をかけて薬学に関する勉強を行います。

薬剤師として、さらに高い知識や技術を持った人材を育成するための課程だといえるでしょう。

4年制の場合

4年制の薬学部の場合、卒業後の大学院課程は最長で5年です。

まず、4年制の薬学部大学を卒業した後、進学するのは「大学院博士前期課程(2年)」です。

この課程を修了すると「修士号」が取得可能で、この時点で薬剤師国家試験の受験資格が与えられます。

そのまま薬剤師免許を取得し薬剤師として働くことも可能ですが、博士号を取得できる「大学院博士後期課程(3年)」に進学することも可能です。

つまり、4年制の薬学部に入学し博士号を取得するにはトータルで9年かかります。

働きながらいける大学院もある!?

ここまで紹介した2つのルート以外にも、社会人として働きながら博士号を取得する方法もあります。
それは、社会人でも博士号が取得可能な大学院に入学することです。

近年では、社会人でも入学できる大学院コースが設けられている学部が多く、薬学部大学院も例外ではありません。
例えば、東京理科大学大学院が「社会人専修コース」を2019年に新設しています。

薬剤師として働きながら大学院に通うのは、非常にハード思われがちですが無理のないカリキュラムで単位を取得していくことで確実に専門性を高めていくことができるでしょう。

このように、一旦社会に出てからも博士号を目標に学ぶ選択肢もあるのです。

学費はどれくらいかかる?

大学院に通うには当然ですが、学費がかかります。

一般的な薬学部の大学院にかかる学費は、年間で国立の場合は約50万円、私立の場合は約60万〜120万円が相場です。

国立の大学院の学費例として、東北大学の学費を見ていきましょう。

国立大学院の学費
内訳 金額
入学金 28万2,000円
授業料 53万5,800円/年
4年間合計 242万5,200円

参考:東北大学大学院薬学研究科・薬学部「学費、生活費、アルバイトなど」

国立の大学院の場合は、学費は大差ないので4年間で242.5万円程です。

次に、私立大学の薬学部大学院の学費を見ていきましょう。

内訳 星薬科大学大学院 東邦大学
入学金 10万円(本大学出身者は免除) 20万円(本大学出身者は免除)
授業料(年間) 80万円 45万(本大学出身者は225,000円)
学生教育研究
災害傷害保険料(4年間)
2,720円 4,660円
設備費 なし 15万円(本大学出身者は免除)
4年間合計 330万2,720円
(本学出身者は320万2,720円)
215万円4,660円
(本学出身者は90万4,660円)

参考:「星薬科大学」「東洋大学」の大学院学費

私立大学の大学院の学費には、大学によって異なります。
私立大学の場合は、6年制の薬学部からエスカレーター式で大学院に進学すると、入学金が免除になったり授業料が安くなったりする所が多いようです。

国立、私立の大学院いずれにしてもこれらの学費をどうやって捻出するのかが、大学院に進学する上では最初の課題となってくるでしょう。

奨学金を借りることも可能ですが、既に薬剤師免許を取得している場合はアルバイトや派遣で学費を稼ぐという方法もあります。
薬剤師の平均時給額は、2,000円なので効率よく稼ぐことが可能です。

どちらにしても、大学院に通うためには学費の工面をどうするのかを計画的に考えておく必要があります。

薬学生が大学院へ進学するメリット

大学院のメリット

薬学生がさらに高い学費を払って、大学院へ進学する意味はあるのでしょうか?

以下では、大学院へ進学することで得られるメリットについて解説しています。

薬学性が大学院へ進学するメリット

  • 研究職へ就職が有利になる
  • 大学の教授になれる
  • プレゼンスキルや専門性が身につく
  • 年収が薬剤師よりも高い

研究職への就職が有利になる

薬剤師資格を活かして研究職へ就きたいと考えている人は、大学院へ進学し博士号を取得することで就職が非常に有利になります。

例えば、大手製薬会社であるアステラス製薬株式会社では、研究職の求人要項を「大学院卒以上」としているのです。

出典元:doda

また、大学卒業と大学院卒の就活生が同時に受験した場合、企業が研究職として雇用したいのは圧倒的に大学院卒のはず。

研究職において大学院卒業というのは、非常に有利に就職活動を進めるための武器になるといえるでしょう。

大学の教授になれる

大学院に進学することで、大学の教授になれるというメリットがあります。

大学の教授になるには、博士号の取得は必須です。
ただ、博士号を取得してもいきなり大学教授になれるわけではありません。

大学教授になるには、大学に就職し助手からスタートし講師、準教授となりようやく大学教授へと昇進していきます。

大学教授の年収は、1070.5万円(厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査」調べ)でした。
ただ、平均年齢が57.6歳とかなり高齢なので、いかに大学教授への道のりが長いのかが伺えます。

しかし、大学教授という仕事は誰にでもできるものでもなく、未来の研究者を育てるという非常にやりがいのある職業です。

プレゼンスキルや専門性が身につく

大学院への進学は、スキルや専門性を身につけることができます。

例えば、大学院に進学するとさまざまな研究をし論文を発表するためプレゼン力が身に付きます。
また、他の院生と協力して研究を進めていくため、コミュニケーション能力も必然的に高まっていくでしょう。

さらに、大学院では薬学の中でもさらに一歩進んだ研究を行うため、より専門的な知見が得られるのです。

このように、薬学部大学卒業だけでは身につけられないようなスキルや専門性が得られるのが大学院のメリットだといえるでしょう。

年収が薬剤師よりも高い

先述の通り、大学院を卒業することで研究職や大学教授になれる可能性が高いです。
大手企業の研究職や大学教授の年収は、1,000万円以上にもなります。

薬剤師の平均年収は、548.3万円なのでかなり差があることが分かるでしょう。

また、基本給においても大学卒よりも大学院卒の方が高く設定している企業が多い傾向にあります。

このように、専門的なスキルや知識を持っている分、年収が一般的な薬剤師よりも高くなることが期待されるでしょう。

薬学生が大学院へ進学するデメリット

大学院のデメリット

ここまで、大学院へ進むメリットを解説してきましたが、もちろんデメリットもあります。

以下では、大学院へ進学する上で覚悟しなければいけないデメリットを解説していきましょう。

薬学性が大学院へ進学するデメリット

  • お金と時間がかかる
  • 生涯年収が下がる
  • 調剤薬局やMRになると意味がない
  • 社会人薬剤師と比べてしまう

お金と時間がかかる

先述の通り、大学院に進学するためには学費がかかります。
大学院の制度によっては、学費免除や奨学金がある大学もありますが、条件が厳しかったり申請が通らない場合もあるでしょう。

また、アルバイトなどで学費を稼ぎながら通うとなると、研究や課題が疎かになり留年してしまう可能性もあるのです。
仮に、6年制の薬学部から4年制の大学院課程をストレートで卒業したとしても10年かかり、年齢も28歳になっています。

大学院に進学するには、時間とお金の両方を無駄にしないような覚悟が必要です。

生涯年収が下がる

ストレートで大学院を卒業したとして、就職するのは28歳です。

そのため、社会人になるのが遅くなり、いくら高年収だといっても生涯年収でいうと薬剤師と同等かあるいは低くなる可能性もあります。

ただ、大学院を出てどの職種や企業に就職するかで年収は変わってくるので、一概には言えません。

しかし、大学院を目指す人は生涯年収の低さを気にしないで、やりがいや目的を持って研究している人が多いのも事実です。

調剤薬局やMRになると意味がない

大学院を卒業後に、一般の薬剤師と同じように調剤薬局やMRに就職してしまうのは意味がないでしょう。

大学院は、薬剤師よりもさらに深い知識を習得するための場所です。
大学院卒業後に調剤薬局薬剤師やMRになってしまうと、大学院で学んだ知識が充分に活かせません。

大学院を目指す人の多くは、研究職や創薬職、大学教授になる人が多いのです。
大学院に進学するのであれば、卒業後のビジョンを明確に描いておく必要があります。

そうでないと、4年〜5年という長い大学院生活は乗り越えられないでしょう。

社会人薬剤師と比べてしまう

大学院に進学すると大学を卒業後、薬剤師として一足先に社会に出る人と比べてしまうことがあります。

社会人として働き給与をもらってる薬剤師を見ると、羨ましくなることもあるかもしれません。
また、社会の貢献度的にも比較してしまうと、どうしてもまだ学生である自分に劣等感を感じてしまうこともあるでしょう。

しかし、先に社会に出てお金を稼いでる社会人薬剤師が偉いわけでもありません。

大学院に進学した人は、大学院でしかできない研究や課題があるはずです。
そのことに没頭していれば、他人と比べる必要はないでしょう。

大学院に進学するには、明確な目標や強い意志、他人と比べない気持ちが大切です。

薬学博士号はどんな職場で活かせるのか?

大学院の就職先

大学院を卒業した後は、薬学博士号を取得できるワケですが、どのような職場で活かせるのでしょうか?

以下では、薬学博士を活かせる職種・職場を解説しています。

大学院卒業後の就職先

  • 製薬会社などの企業
  • 大学
  • 病院
  • 国の研究機関
  • メディカルライター

製薬会社などの企業

大手企業の募集の中には、博士号取得者を募集条件としている企業があります。

例えば、博士号取得者を対象とする以下のような研究職の求人が見つかりました。

出典:パソナキャリア

企業薬剤師の年収は、800万円からと非常に高い水準で募集しています。

また、大手製薬会社の新薬開発の研究職や食品会社など、高度な知識を必要とする業務においては、大学院卒の人材が必要不可欠なのです。

大学

先程の章でも解説しましたが、大学の教授になるには、博士号が必要です。

ただ、大学で働くだけであれば必ずしも博士号が必要というわけではありません。

大学では、以下のような求人が見つかりました。

出典:求人ボックス

募集は、博士研究員として入職し最終的には教授を目指すことになるでしょう。

大学の給与は、28万円となっており大手企業と比べると少ない印象です。

病院

病院は、薬剤師資格だけでも就職することは可能ですが、大学病院や規模が大きな病院では博士号取得者が就職では有利となります。

病院は、以下のような求人を見つけました。


出典:JREC-IN Portal

病院では、薬剤部長や薬剤師部の責任者として役職に就くことを目的に募集しています。

国の研究機関

博士号は、国のさまざまな研究機関で活かすこともできます。
この場合は、国に就職することになるので扱い上は公務員です。

国の医薬品に関する研究所の代表としては、厚生労働省が所轄している「医薬品医療機器総合機構」などが挙げられます。

他にも、文部科学省の理化学研究所や厚生労働省の感染症研究所など、薬剤師が活躍できる分野があるのです。

このように、大学院を卒業してからも研究を続けたいという方には、おすすめの職種だといえるでしょう。

メディカルライター

博士号取得者の求人を探してみると、意外にも多いのがメディカルライター。

メディカルライターとは、医薬品開発に関わる執筆や雑誌やWeb媒体で医療従事者向けにコンテンツを発信する仕事です。

メディカルライターの求人例としては、以下のようなものがヒットしました。

出典:リクルートエージェント

メディカルライターの仕事自体は、大学院の学歴を問わないことが多いですが、英語の論文を参考にしながら執筆することもあるでしょう。

そのため、大学院出身者を積極的に採用する傾向にあるようです。

メディカルライターの仕事についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

まとめ:大学院は薬剤師の可能性を広げる場所

大学院で学ぼう

ここまで、大学院に進学するメリット・デメリットや活躍できる職場について解説してきました。

まとめ

  • 大学院を卒業するまでには4〜5年かかる
  • 6年制薬学部の場合大学院に進学すると卒業する頃には28歳
  • 大学院出身者は就職に有利
  • 大学院の学費は年間50〜120万円程度

大学院に進学すると就職先の選択肢が広がり、面接時にも有利になります。
また、大学院でしか経験できないような研究内容や発見があるはずです。

大学院での時間を有意義にするには「なぜ大学院に進学するのか」「進学して何をしたいのか」を明確にすることが大切です。

将来のキャリアの可能性を広げるためにも、大学院は大きなメリットだといえるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次
閉じる