「ピッキングが遅いし、ミスも多い……」
「ピッキングを早くするコツを知りたい!」
とくに調剤経験の浅い薬剤師の中には、ピッキングに関する悩みを持っている方が少なくありません。
薬剤師の対物業務から対人業務へのシフトが重視され、ピッキングマシンのある薬局も増えてきてはいますが、まだまだ薬剤師にとってピッキングは重要な業務の一つと言えるでしょう。
そこで今回は、ピッキングのコツをご紹介します。
基本に立ち返って見直すことで、調剤で求められるピッキング力を確実にアップさせていくことができるでしょう。
ピッキングで絶対に欠かせないポイント
患者や他の薬剤師からのプレッシャーから、ピッキングの遅さを気に病む薬剤師は多いですが、大前提としてスピードよりも正確さを優先しなければなりません。
<ピッキングの優先順位>
- 正確さ
- スピード
いくらスピードが速くても、ミスがあれば結局やり直しになって周りに迷惑をかけてしまいます。
最悪のケースでは調剤過誤を起こすこともあるでしょう……。
正確なピッキングを行うことが、スピードアップにつながることを忘れないでください。長期的な視点で実力を底上げすることが重要です。
正確なピッキングのコツ
ピッキングを正確に行うコツは、次の5つです。
すでに学生時代に習った内容もあるかもしれませんが、基本に立ち返って見直しましょう。
調剤支援票よりも処方せんを見る
ピッキング時には、必ず処方せんを見ましょう。
調剤に不慣れな方はよく、調剤支援票や薬情だけを見てピッキングをしてしまうことがありますが、処方箋を見ないとミスが起こりやすくなります。
なぜなら調剤支援票や薬情は、薬局内の事務スタッフなどが処方内容をレセコンに入力して印刷するものだからです。
他のスタッフが入力ミスを起こしている可能性があることを十分に意識しましょう。
<ピッキングに関わる書類>
書類 | 概要 | ピッキング時のメリット | ピッキング時のデメリット |
処方せん | 医師が発行したもの。調剤の基本 | 大もとの情報を参照し、正確な調剤ができる。処方せんからの調剤が大原則 | 一般名処方やジェネリック変更など、実際に取りそろえる医薬品名は分からない。 |
調剤支援票 | 事務などが処方せんを見て入力したもの。調剤の効率をアップする情報 | 実際に取りそろえる医薬品名や棚番号が書いてあり、作業効率を改善できる | 入力ミスの可能性 |
薬情 | 事務などが処方せんを見て入力したもの。患者向けの情報 | 実際に取りそろえる医薬品名が写真付きでわかる | 入力ミスの可能性 |
もちろん、調剤支援票などを見てはいけないという意味ではありません。
処方せんは一般名で処方されていることも多く、実際に取りそろえる薬の名称やメーカー名は調剤支援票でチェックする必要がありますよね。
支援票はあくまで参考として扱い、原本の処方せんを欠かさずチェックしましょう。
薬品名は正確に
「セフカペンピボキシルとセフジトレンピボキシル」、「ユリーフとユリノーム」、「ノボリンとノボラピッド」など、名称類似によるヒヤリ・ハットの事例は後を絶ちません。
成分だけではなく普通錠と口腔崩壊錠、軟膏とクリームなど、剤型まで集中力を切らさず確認する必要があります。
自分がヒヤリ・ハットを起こしそうになった薬はメモを取り、二度と繰り返さないようにしましょう。
社内で収集された過誤レポートがあれば目を通したり、公益財団法人日本医療機能評価機構が公表している「薬局ヒヤリ・ハット事例収集」
規格を見逃さない
5mgと10mgといった規格のピッキングミスは、誰でも一度は経験があるのではないでしょうか。
とくに調剤に不慣れな時期には、正しい薬品名までたどり着いただけで安心してしまい、mg数を見逃すことがあります。
<こんな時はとくに含量規格(mgなど)に注意!>
- 「これまで5mg錠だった患者が、今回から10mgにアップした」
処方せんの医薬品名は変わらずドースアップ・ドースダウンが行われる場合など、事務スタッフの入力ミスがとくに起こりやすい状況と言えます。
ピッキングのときは、処方せんを見ながら規格を確認しましょう。
ジェネリックのメーカー名は要注意
同成分のジェネリックを複数メーカーで在庫している場合、メーカーの取り違いが多いので注意しましょう。
あなたの薬局には「ある患者だけが、特定メーカーのジェネリック薬を希望している」というケースはありませんか?
例えばタムスロシン塩酸塩OD錠0.1mg「あすか」と「ケミファ」のようなケースです。
処方せんに一般名でしか記載がない場合、薬局内の調剤支援票と薬歴が頼りです。
ピッキングミスを防ぐために、薬局内の情報も忘れず確認しましょう。
薬歴は必ずチェック
ピッキングを完了する前に、薬歴で禁忌薬や一包化、粉砕の必要性などを必ずチェックしましょう。
例えば処方せんで粉砕指示が漏れていても、実際には粉砕しないと服用できない患者だった……というケースなどが挙げられます。
薬歴を見落とすと調剤のやりなおしにつながり、大幅なスピードダウンとなります。最悪の場合は調剤過誤となる恐れもあるので、薬歴チェックは必須です。
スピーディなピッキングのコツ
正確なピッキングが身についたら、段階的にスピードアップをしていきましょう。次の5つのコツを意識することが役立ちます。
動作をすばやくする
手を動かす、調剤室内で歩く、などの作業ひとつひとつをすばやく行うように心がけましょう。
「馴れ」の部分が大きいのでいきなり急ぎ過ぎず、正確さを損なわない程度にスモールステップで挑戦してみてください。
複数をまとめて記憶する
処方せんに載っている薬品を1つずつ見てピッキングしていくのでは、どうしても時間がかかってしまいます。
処方せんの上から3つずつ一気に記憶してピッキングするなど、まとめて取り揃えることができればスピードアップできます。
また、「ロキソプロフェンとレバミピド」など、頻出の組み合わせを記憶して、その内容で処方が出たら即座に体を動かせるよう習慣づけるのもおすすめです。
よく出る薬の包装単位を暗記する
よく処方される散剤が1束に何包入っているか、湿布が1パック何枚入っているか、暗記してしまいましょう。
分3なら何日分相当、分2なら何日分相当……すぐに返答できますか? ピッキング時に1束単位の包数から数えていると、どうしても時間がかかってしまいます。
複数の包装単位が販売されている医薬品でも、自分の店舗で在庫しているものの包装単位は限られているはずです。
小学生の九九と同じで、暗記できている人はとっさに行動することができます。
また、7日単位で処方されるケースが多いため、7の倍数をスラスラ言えるようにしましょう。
暗記できる量には個人差がありますから、頻出のものから優先的に覚えることをおすすめします。
片付けながらピッキングする
調剤棚が空き箱であふれかえっていると、作業しづらくなってスピードが落ちます。
調剤しながら、空いた箱はその都度ゴミ箱に捨てていくなど、ピッキングと片付けを同時進行で行うのが効率的です。
こまめに捨てられるよう、ゴミ箱の数や配置を工夫するのも大切ですよ。
薬局内の動線を改善する
薬品棚、分包機、監査台、ゴミ箱などの配置を、最短で調剤できるように整えるとスピードアップにつながります。
動線が悪いとスタッフ同士がぶつかったり、ムダな動きをしなければならなかったりしてタイムロスが発生してしまうからです。
調剤棚の医薬品を50音順と薬効別のどちらで配置するべきかなどは、薬局によりケースバイケースと言えます。
応需する処方箋の傾向や、薬効に不慣れな調剤補助員の有無などにより柔軟に考えるべきでしょう。
自分ひとりの力では職場動線を変えることは出来ませんが、他のスタッフと一緒に取り組むと職場全体の業務効率を改善できます。
まとめ
ピッキングのスピードアップを目指す人は、単純に作業をすばやくすることよりも「正確なピッキング」を身につけることを優先しましょう。
少し遠回りに感じられても、処方箋・調剤支援票・薬歴に目を通し、ミスのない調剤を行うほうが結果的にはスピードアップになります。
正確なピッキングを身につけながら、段階的に「動きを早く」「まとめて記憶」といったコツを取り入れてスピードアップを図りましょう。
薬剤師にとって欠かさないピッキング業務。正確さとスピードを両立して作業できるようになれば、薬剤師としてゆるぎない自信を持つことにつながります。
ピッキングが得意な薬剤師は、もし転職を考える場合にも、自分の能力を信頼しながら転職先を探すことができるでしょう。
みなさんが自信をもって薬剤師として活躍できることを、心より応援しています。
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