「薬剤師として働きながらダブルライセンスを取りたいけれど、簿記の資格は役に立つ?」
「簿記の資格があると転職で有利になる?」
薬剤師飽和時代と呼ばれる昨今。薬剤師がダブルライセンスを取得して他の薬剤師との差別化を意識している人も多いのではないでしょうか。
簿記という資格は知名度が高く、経営に不可欠なスキルであることから関心を持っている人も少なくありません。
今回は薬剤師が簿記を学ぶメリットや学習方法について解説します。
薬剤師でも知っておきたい、簿記の基本
簿記とはお金とモノの出入りを記録する方法のこと。
帳簿で日々の取引を記録して、最終的には経営成績を明らかするための決算書を作成します。簿記は会社の財務状況を把握するための作業であるため、経理担当の人には必須スキルです。
簿記では損益計算書や貸借対照表、貸方・借方など、耳慣れない専門用語がたくさん用いられるため、「なんだか難しそう……」と苦手意識を持つ人も多いかもしれません。
しかし、経営に関するものである以上、調剤薬局やドラッグストア、病院の経営にとっても簿記は必須です。
なお、簿記検定には「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の3種類があります。とくに知名度が高く、就職や転職でも有利に働くのは日商簿記です。
薬剤師が簿記を学ぶメリットとは?
薬剤師が簿記の資格と知識を活かすと、「経営」「独立開業」「プライベート」の3つの場面でメリットが得られます。
順番に見ていきましょう。
調剤薬局、ドラッグストアの経営に活かす
店長や薬局長などとして経営に関わるなら、簿記の知識があると便利です。事業業績のデータを読み取って自社や自店舗の経営管理に活かしたり、取引先などの経営状況を適切に判断できるようになるからです。
また、分析力やコスト意識も高まるため、在庫管理や人件費の無駄などを省いた経営が可能となるでしょう。
薬剤師のハイキャリア転職を目指す際にも、日商簿記検定2級などの資格があると経営能力を期待され、採用側の目に留まる可能性が高まります。
独立開業するときにほぼ必須
独立開業して自身が社長となる場合には、簿記の知識はほぼ必須と考えたほうがよいでしょう。
「簿記の資格がないと絶対に社長になれない」という意味ではありませんが、経営の基礎知識を持たずに経営トップに立つのはハイリスクであるため、結論的に簿記検定に合格できるレベルでの知識が不可欠です。
独立開業すれば、自社の事業を数字で評価して経営分析を行わなければなりません。
仮に税理士に決算書の作成を依頼するとしても、その決算書の内容を理解して次年度以降の経営に反映していくことが、社長には必須です。
そのため、独立開業を目指す薬剤師は簿記の取得をおすすめします。
プライベートに簿記の知識・スキルを活かす
会社の経営に必須な簿記の知識やスキルは、もちろん家計の管理にも生かせます。家庭を小さな会社と考えれば、簿記のスキルでお金とモノの動きを無理・ムラ・無駄なく帳簿で管理することが可能です。
毎月の収支管理だけでなく、長期的なライフイベントに合わせたお金の管理や資産運用なども検討できるようになるでしょう。
薬剤師はどの程度簿記を学ぶべき?
結論から言うと、薬剤師が経営や転職時に簿記を活用したい場合は「日商簿記2級」を目指しましょう。
プライベートで家計の管理をするのが目的の場合には、基礎知識レベルの「日商簿記3級」で差し支えありません。
日商簿記とは日本商工会議所・各地商工会議所の検定試験であり、年間約60万人の受験実績を誇る社会的信頼度の高い検定試験です。
(参照:簿記|日本商工会議所Webサイト)
日商簿記は、1級・2級・3級・簿記初級・原価計算初級がありますが、一般的には3級から受験します。
<日商簿記検定の級と難易度>
- 3級:合格率30~40%、基礎レベル
⇒日常生活に活かすなら3級でOK - 2級:合格率25%前後、経営に活かせる実践レベル
⇒薬剤師がビジネスに活かすなら2級! - 1級:合格率10%程度、公認会計士や税理士を目指す人が受験するような最高峰レベル
履歴書に簿記の資格を記載する場合は、一般的には3級以上にするのが一般的です。
2級以上だと実務レベルの知識を保証できるため、ビジネスでも重宝されます。
なお、日商簿記2級と3級の検定試験は、年間3回実施されています(2022年現在)。
受験料は2級が4720円(税込)、3級が2850円(税込)とチャレンジしやすい価格なので、勉強してからぜひ受験してみましょう。
薬剤師が簿記を学ぶ方法
日々の業務で忙しい薬剤師にとって、資格の勉強は効率よく進めるのがカギ。簿記を勉強するおすすめの方法は独学・通信講座・スクールの3つです。
3つの学習方法のメリット・デメリットと費用を以下の表にお示しします。
<独学・通信講座・スクールの比較>
学習法 | メリット | デメリット | 費用(簿記2級) |
独学 |
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1冊1,500円程度 |
通信教育 |
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約50,000円 |
専門学校 |
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約100,000円 |
参考書を買って独学する
日商簿記検定の2、3級は独学でも取得することが可能です。
参考書や過去問題集を購入し、毎日こつこつ勉強していきましょう。日本商工会議所のウェブサイトは、サンプル問題や出題の意図・公表などが掲載されているので参考にしてみてください。
ただし、独学には最新情報の収集が難しいというデメリットがあるので注意が必要です。過去問題ばかりではなく、新しい会計基準の勉強をとり入れるため、試験直前には専門学校を利用するといった工夫もすると良いでしょう。
独学で簿記を目指す人におすすめの書籍(1)
引用元:日本商工会議所ホームページ
価格:1,510円(税込)
「新論点問題集 日商簿記2級」は、商工会議所福利研修センターの公式問題集です。2016年度以降に改訂された新論点の内容に特化した問題集であり、試験勉強の総仕上げとして使用するのに向いています。
独学で簿記を目指す人におすすめの書籍(2)
引用元:BOOK STORE|TAC出版
価格:1,540円(税込)
TAC出版の「スッキリわかるシリーズ スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 第14版」は、テキストと問題集がセットになっており、ストーリー仕立てでわかりやすく勉強できるテキストです。
テキストを読んで問題集を解くという基本の流れを繰り返し、合格を目指していきましょう。
通信講座
通信講座で簿記を学ぶメリットは、合格までのスケジュールとカリキュラムが明確で、講座ごとに設定された「標準学習期間」内に無理なく合格を目指せることです。
独学だと視野狭窄におちいりやすい受験勉強ですが、通信講座は教材・副教材などでバランスよく学習でき、最新知識も自然に吸収することができます。
スクール受講と違って時間的な制約が少ないので、スキマ時間を活用できるのも通信講座の特徴。忙しい薬剤師の皆さんも、休憩時間や通勤時間を有効活用して簿記合格を目指せます。
生涯学習のユーキャン
生涯学習のユーキャンでは、日商簿記3級、2級講座を受講できます。(2級コースの受講には、3級レベルの知識保有が前提になっています。)
<生涯学習のユーキャンの費用例>
- 簿記3級講座:月額3,300円(税込)×13回
- 簿記2級講座:月額3,800円(税込)×13回
簿記3級なら3ケ月、簿記2級なら6ケ月のスケジュールで余裕をもって学習でき、テキスト学習と添削指導をくりかえしながら合格へと導いてくれますよ。
資格合格のクレアール
資格合格のクレアールでは、日商簿記1~3級コースが開設されています。2級と3級コースをセットで受講できるおトクなコースも選択可能です。
<資格合格のクレアールの費用例>
- 2023年2月目標3級パックWeb通信:14,800円(税込)
- 2023年2月目標2級パックWeb通信:53,000円(税込)
- 2023年2月3級・2級目標講義パックWeb通信:50,000円(税込)*割引サービスあり
クレアールの魅力はパソコン、スマホ、タブレットのいずれかがあれば学習可能なこと。動画配信された講座を視聴して、不明点があればメールや電話、Skypeで質問することが可能です。
テキストは紙とPDFの両方を利用できるので、学習環境に合わせて使い分けられます。
(参照:簿記3級講座の受講をお考えの方へ|資格合格のクレアールホームページ)
スクール(専門学校)
スクールで簿記を学ぶメリットは臨場感を持って学習でき、モチベーションを維持しやすいこと。わからないことは授業後にすぐ質問でき、講師と直接対話できるのが魅力です。社会人向けのコースを利用すれば、仕事と専門学校での学習を両立することも可能です。
また、多くの専門学校では通学だけでなく映像授業による簿記講座も用意されています。自分のタイミングに合わせて、好きな時間に受講できますよ。
資格の大原
資格の大原では日商簿記の講座も非常に手厚く、大きく分けると初学から3級合格を目指すコースと、簿記経験者向けの1・2級コースになっています。3級はさらに「3級合格コース」「3級・2級ダブル合格コース」などニーズに分けて複数から選択可能です。
<資格の大原の費用例>
- 3級から学ぶ2級合格コース【受講期間6ケ月】:77,900円(税込)
- 3級から学ぶ2級合格コース映像通学:94,800円(税込)*割引あり
資格の大原では合格のコツを解説したウェビナーや、ネット試験攻略セミナーなども別途開催しているので、合格の確実性をより高めたい人はチェックしてみてはいかがでしょうか。
(参照:簿記3級|資格の大原ホームページ)
資格の学校TAC
資格の学校TACでは日商簿記1~3級の講座があり、通塾と通信授業の2タイプから選択可能です。
簿記未経験から3級、2級へとステップアップしていく講座や初学から直接2級を目指すコースなど、さまざまなコースがあるので自分の学習スタイルに合わせて検討すると良いでしょう。
<資格の学校TACの費用例>
- 3・2級ステップ合格本科生 教室講座99,000円(税込
- 3・2級ステップ合格本科生 Web通信講座84,000円(税込)*割引サービスあり
毎月実施の無料セミナーもあるので、実際に体験してみるのもひとつです。
(参照:簿記|資格の学校TAC)
まとめ:簿記のできるワンランク上の薬剤師をめざそう!
簿記は経営に不可欠なお金とモノの出入りを記帳し決算書を作成する一連の作業のことで、経営に関わる人にとって重要なスキルといえます。
薬局長などとして経営に関わる薬剤師や、独立開業を目指す薬剤師の人であれば、日商簿記2級程度の知識やスキルを身につけると実務に役立てることが可能です。
簿記は知名度が高く、ハイキャリアを目指す薬剤師にとっても実用性の高い資格といえます。ダブルライセンスの候補として、チェックしてみてくださいね。
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