「MRの平均年収はいくら?」
「薬剤師はMRになれる?」
「MRってどんな仕事?」
薬剤師の方でMRという職種に興味を持っている人は、多いのではないでしょうか?
その中で、上記のような疑問を抱いている人も少なくありません。
この記事に辿り着いたあなたも、きっとMRの年収について気になっていることでしょう。
はじめに言っておくと、MRの年収は薬剤師よりも高いです。
ただし、全てのMRが薬局などに勤務する薬剤師よりも高給取りというわけではありません。
そこで本記事では、MRの仕事について気になる薬剤師のために、MRの企業別の年収・平均年収や仕事内容などについて解説していきます。
この記事を読むと、以下のことが分かるようになっています。
この記事で分かること
- MRの仕事内容
- MRと薬剤師の平均年収を比較
- MRの年収が高い製薬会社
- MRになるには?
- MRの将来性
- MRのメリット
- MRのデメリット
MRってどんな仕事?
MRは「medical representative(メディカル・レプリゼンタティブ)」の略称で、日本語に直訳すると「医療情報担当者」
つまりMRは、製薬会社の医薬品情報を医療従事者に提供する人のことを指します。
MRの主な役割は、医師や薬剤師などの医療従事者に対して、医薬品の情報提供と自社製品の医薬品販売を促進する営業担当です。
それと同時に、製品のアフタサポートや適切な使用方法の指導を行います。
またMRは、自社製品を扱うため、医薬品の安全性や有効性などを説明できる幅広い知識が必要です。
医療業界にとってMRは、最新の医薬品情報を提供してくれる貴重な存在であるといえるでしょう。
MRの仕事内容は多岐に渡る
MRの主な仕事内容は「医薬品に関する情報提供と販売促進」です。
また、医薬品の販売促進に関して自社製品だけでなく、営業提携している製薬会社の医薬品も含まれる場合があります。
さらに、MRには製薬会社所属の営業担当者とCSO企業(Contract Sales Organization:医薬品営業マーケティング受託機関)から派遣されるコントラクトMRの2つのMRがいるのです。
医薬品には医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」とドラッグストアなどで扱う「一般用医薬品(OTC医薬品)」の2種類に分けられます。
そのうち、MRが扱うのは「医療用医薬品」のみ。
MRは、医療従事者に医療用医薬品の「効能・効果・用法・量用」などの情報提供を行い、製薬会社の売り上げに繋げていきます。
MRの1日の業務内容
次に、MRの具体的な仕事内容を見ていきましょう。
以下のタイムテーブルは、とある製薬会社のMR業務を表したものです。
8:30 | 出勤 |
|
8:45 | 医師と面談に病院へ |
|
9:30 | 帰社・内勤 |
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12:00 | 昼休憩 |
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12:30 | 医師と面談に別の病院へ |
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13:00 | 医師と面談 |
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15:30 | 帰社・内勤業務 |
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19:00 | 退勤 |
|
このようにMRは、基本的に医師との時間を調整しながら面談を行なっているのです。
面談では、医師との情報交換をしながら医薬品の販売を促進、適切な使用方法を指導していきます。
その他は、医薬品に関する資料作成や、病院への訪問アポイントメントなど業務は多岐にわたるでしょう。
MRはこのように1日にいくつもの病院を訪問し、医療従事者との面談の中で信頼関係を築いていくのです。
MRと薬剤師の平均年収を比較
薬剤師よりMRの方が平均年収は高い傾向にあります。
以下では、MRと薬剤師の平均年収を比較していきましょう。
薬剤師の平均年収は561.6万円
厚生労働省の「令和元年 賃金構造基本統計調査」によると薬剤師の平均年収は561.6万円と公表されています。
また年代別の薬剤師平均年収は以下の通りです。
年齢 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 336.2万円 |
25~29歳 | 496.3万円 |
30~34歳 | 581.0万円 |
35~39歳 | 653.6万円 |
40~44歳 | 652.0万円 |
45~49歳 | 704.1万円 |
50~54歳 | 719.2万円 |
55~59歳 | 729.9万円 |
政府統計の総合窓口 e-Stat 賃金構造基本統計調査/賃金構造基本統計調査/令和元年賃金構造基本統計調査/ 一般労働者/ 職種 職種・性、年齢階級別(きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額より算出)
薬剤師の平均年収を年代別に見てみると、順調に年収は上昇し続け平均年収のピークは、定年前の55〜59歳の729.9万円です。
このように薬剤師の年収は、年代と共に上がっていき比較的安定しているといえるでしょう。
ただ、この表で解説した平均年収は、薬剤師全体の平均年収です。
薬剤師は病院やドラッグストアなど、勤務先によっても平均年収は変わってきます。
薬剤師の平均年収について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
MRの平均年収は684万円
MRの平均年収は、684万円と薬剤師よりも約123万円以上高い給与水準となっています。
MRの年代別平均年収は、以下の通りです。
年齢 | MR平均年収 | 薬剤師平均年収 |
全体 | 684万円 | 561.6万円 |
20~24歳 | 390万円 | 336.2万円 |
25~29歳 | 436万円~486万円 | 496.3万円 |
30~34歳 | 434万円~534万円 | 581.0万円 |
35~39歳 | 505万円~609万円 | 653.6万円 |
40~44歳 | 563万円~684万円 | 652.0万円 |
45~49歳 | 644万円~766万円 | 704.1万円 |
50~54歳 | 711万円~821万円 | 719.2万円 |
55~59歳 | 704万円~814万円 | 729.9万円 |
参照:平均年収.jpより
※平均年収と国税庁の年齢別階層年収との比率で算出。
※賞与は夏冬合わせた4か月分で算出してます。
上記の表からも分かるように、MRの平均年収は薬剤師よりも高いことが分かります。
しかし、MRの平均年収のピーク年齢は薬剤師よりも若い55〜54歳です。
また、年収にも幅があり製薬会社によっても給与は異なります。
つまり、MRの平均年収薬剤師よりも高いが、給与に幅があり平均年収のピーク年齢も若い傾向にあるのです。
MRの年収はなぜ高い?
ここまで、薬剤師とMRの平均年収を比較してきました。
では、なぜMRの年収は高いのでしょうか。
それには以下のような理由があげられます。
MRの平均年収が高い理由
- 契約によるインセンティブ
- 高度な医薬品知識が必要だから
- 製薬会社は利益率が高いから
MRの仕事は、自社の医薬品を使用してもらうための契約をとることです。
契約が取れれば、インセンティブとして給与に反映されます。
また、MRの仕事は医療従事者をクライアントに持つ職業です。
そのため、高度な医薬品知識を持って営業をする必要があるので、日々の勉強が大切になるでしょう。
そして、製薬会社は利益率が非常に高く、医薬品の値段も厚生労働省が決めているため、大幅な価格変動はありません。
こうした、製薬会社の利益率の高さは、社員に給与として還元する余裕が生まれるのです。
MRなら年収1000万円も可能
MRは薬剤師よりも年収が高く、製薬会社によっては年収1000万円以上も可能です。
先述の通りMRは、契約によるインセンティブ(歩合給)があります。
そのため、営業の業績が良ければ年齢に関係なく、高年収を狙える職種です。
また、日本の大手製薬会社や外資系の製薬会社であればさらに、高い年収が望めるでしょう。
【ランキング】MRの給与が高い製薬会社TOP10
以下の表は、各製薬会社が公表している有価証券報告書をもとに、MRの平均年収を算出しました。
順位 | 製薬会社 | 平均年収 | 平均年齢 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
1 | 第一三共 | 1,133万円 | 43.4歳 | 14,818人 |
2 | 大塚HD | 1,076万円 | 44.3歳 | 32,817人 |
3 | アステラス製薬 | 1,073万円 | 42.6歳 | 16,895人 |
4 | エーザイ | 1,038万円 | 44.3歳 | 10,525人 |
5 | 武田薬品工業 | 1,015万円 | 40.4歳 | 29,900人 |
6 | 中外製薬 | 953万円 | 42.6歳 | 7,372人 |
7 | 塩野義製薬 | 928万円 | 41.7歳 | 5,226人 |
8 | 田辺三菱製薬 | 901万円 | 44.6歳 | 7,209人 |
9 | 小野薬品工業 | 896万円 | 40.9歳 | 3,420人 |
10 | 大日本住友製薬 | 852万円 | 41.7歳 | 6,529人 |
参考:金融庁「EDINET」
上記の表からも分かるように、年収が1000万円を超えている製薬会社は5社もあります。
また、従業員数が10,000人以上いる企業は平均年収も高くなっていることから、大企業であればあるほど年収は高い傾向にあるようです。
社員の平均年齢は、どの企業も40代前半を推移しており、一般企業の41.4歳と比べても平均的な年齢であることが分かります。
(※2019年3月期決算上場企業1,841社「従業員平均年齢」調査を参照)
このように、MRの年収は企業によって差があるといえるでしょう。ただ上位10位でこの給与なので規模の小さい製薬会社では薬局薬剤師よりも給与が低い場合もあります。
MRになるには?
MRになるには、どのような条件が必要なのでしょうか?
以下では、MRになるために必要な資格を解説しています。
薬剤師資格は必須ではない
MRの仕事をする上で、必ず取得しなければいけない資格は実はありません。
しかし、MRは高度な医薬品知識が必要なため、薬剤師免許を保有しているMRや元薬剤師が多いのも事実です。
また、学歴などもほとんどの企業で「大卒以上」と定められています。
MRは必ずしも特別な資格は必要ありませんが、企業によって一定の応募資格があるのです。
MR認定試験とは
MRには、薬剤師免許のような国家資格は不要ですが「MR認定試験」という民間資格が存在します。
MR認定試験は、MR試験医薬情報担当者教育センター(MR教育センター)主催のもと、毎年12月に実施。
MR導入教育の成果を評価するために設けられた試験です。
MRの試験概要は、以下の通りになります。
受験資格 |
|
試験科目 |
|
認定有効期間 | 認定日から5年間 |
実施日程 | 12月(年一回実施) |
合格率 | 74.3%(2019年 第26回 合格率) |
MRの業務にMR認定証は必須ではありませんが、製薬会社やCSOでは、MR認定証の取得を義務付けている企業は多いです。
MRの男女比割合
MRは営業職であるため、男性が多いイメージですが女性でもなれるのでしょうか。
以下の表はMRの男女比を表しています。
性別 | 男性 | 女性 | 全体 |
人数 | 53,185人 | 9,248人 | 62,433人 |
割合 | 85.2% | 14.8% | 100% |
参考:MR認定センター「MR白書」より
表からも分かる通り、男性のMRが約8割以上を占めており、女性の割合は2割未満に留まりました。
このように、MRは男性の方が多いことが分かります。
しかし、女性のMRの数は少ないものの活躍できるのは事実です。
MRの平均年齢
次に、MRの平均年齢を年代別に見ていきましょう。
以下の表は、2021年現在、MRとして働いている人の平均年齢をまとめました。
年代 | 割合 |
20代 | 28.4% |
30代 | 33.7% |
40代 | 24.6% |
50代 | 11.4% |
60代 | 1.9% |
参考参考:MR認定センター「年代別 MR割合比較(全体)」より
表を見てみると、最も多い年代が30代の33.7%、次いで20代の28.4%という結果となりました。
MRは、比較的若い層が活躍している職場だといえるでしょう。
MRの今後と将来性について
MRの数は年々減少傾向にあり、採用人数も少なくなっています。
MR認定センターが公表した2020年版の「MR白書」によると、19年度(20年3月31日時点)の国内のMR数は5万7158人で、前年度から2742人(4.6%)減りました。国内のMR数は13年度の6万5752人をピークに6年連続で減少しており、この6年で8594人減ったことになります。
引用:Answers Newsより
上記の記事からも分かるように、MRの置かれている状況は厳しいのが現実です。
その背景には、厚生労働省の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の施行があります。
このガイドラインの施行により、MRの医療機関への訪問規制が厳しくなりました。
そのため、製薬会社はMRに対する業務を縮小しているのが現実です。
しかし、医療機関にとってMRは医療情報を提供してくれる貴重な存在であり、パートナー。
今後のMRの将来性は厳しいと予想されますが、医療業界がある限り、完全に仕事がなくなることはないといえるでしょう。
薬剤師免許を持つ人がMRに就職・転職するメリット
薬剤師からMRに転職すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
薬剤師の知識が活かせる
MRは医薬品に関する薬剤知識が必要です。
そのため、営業職であっても高度な薬剤知識が求められるため、医療機関を担当できるようになるまでには、かなりの時間がかかります。
一方で、薬剤師はある程度の薬剤知識があるため、同期よりも早く現場に出られる可能性が高いです。
また、薬剤師がMRに転職することで、説得力のあるプレゼンテーションを行うことができるでしょう。
年収が上がる
先述の通り、MRの平均年収は薬剤師よりも高いのが特徴です。
また、年収が上がるだけでなく大手の製薬会社であれば、福利厚生が充実しています。
MRは、奨学金を早く返済したい薬剤師にとっては、非常に魅力的な職業だといえるでしょう。
最新の薬剤知識が得られる
MRという仕事の特性上、医療従事者よりも早く医薬品の最新情報を知ることができます。
MRはそれらの情報を精査し、適切な使用方法や効能などを医療従事者に提供するのです。
そのためには、日頃から医薬品に関する知識を勉強することが求められるでしょう。
自分のペースで仕事が進められる
MRは薬剤師に比べ、仕事の自由度は高いです。
薬剤師であれば、決まった時間に決められた場所に行き、同じメンバーで仕事をするのが一般的。
一方で、MRは自分でスケジュールを決めて動くため、自分のペースで仕事が進められます。
MRは、自分でスケジューリングを組み立て、効率的に仕事を進められるのです。
薬剤師以外のキャリア形成ができる
薬剤師からMRへ転職することで、薬剤師以外のキャリアが形成できます。
例えば、クライアントに対するプレゼン能力や資料作成などは、薬剤師業務では経験することのない業務です。
薬剤師以外のキャリアができることで、業務の幅も広がり、さまざまなスキルが身につくでしょう。
薬剤師がMRに就職・転職するデメリット
ここまで、薬剤師がMRに転職することのメリットを解説してきましたが、もちろんデメリットもあります。
デメリットを知っておくことも転職においては非常に大切です。
以下では、薬剤師からMRに転職する際のデメリットを解説しています。
転勤が多い
MRは高年収であると引き換えに「転勤」という条件があります。
大手製薬会社であれば、全国や海外転勤も避けては通れないでしょう。
独身であれば転勤は自分だけの問題ですが、家族がいる場合には家族にも転勤を強いることになります。
単身赴任という方法もありますが、家族と一緒過ごしたいという人にとって、MRはおすすめできない職業のひとつです。
ノルマがある
MRは営業職なので、ノルマという名の営業目標が掲げられています。
薬剤師であれば、まずノルマを課せられることはないでしょう。
しかし、MRは製薬会社の利益を目的としているため完全なる実績主義です。
そのため、ノルマを達成できないストレスが溜まり退職してしまう人も少なくありません。
リストラ
先述の通り、MRの市場規模は年々減少傾向にあり、厳しい現状が続いています。
そのため、営業成績の悪い社員に対しては早期退職やリストラを強いることも少なくありません。
MRは優秀な人材が生き残り、そうでない人材は淘汰される厳しい職種だといえるでしょう。
異業界の営業への転職が困難
MRは営業職ですが、異業種の営業職への転職は困難です。
なぜなら、MRのクライアントは医師という特殊な職業であるため、一般企業の営業スタイルとは異なります。
そのため、全くの異業界への営業に転職してもMRのスキルが活かせません。
MRが仮に転職するのであれば、別の製薬会社でMRとして採用されるか、 MS(医薬品卸販売担当者:Marketing Specialist)への転職が現実的でしょう。
しかし、全くの未経験でも年齢が20代、30代のうちであれば異業界への転職は可能です。
MRに向いている薬剤師
ここまで、薬剤師がMRに転職するメリット・デメリットを解説してきました。
これらのポイントを踏まえた上で、MRに向いている薬剤師は以下の通りです。
MRに向いている薬剤師
- 物事を分かりやすく理論的に説明できる薬剤師
- 転勤が苦にならない薬剤師
- コミュニケーション能力が高い薬剤師
- 学ぶことに貪欲な薬剤師
MRは社会的地位の高い医師を相手にする職業なので、理論的に説明できる能力が求められます。
また、転勤や移動などに柔軟に対応できる適応能力が必要です。
目まぐるしく変わっていく医療業界の中で活躍するMRは、常に学ぶ姿勢の貪欲さが求められるでしょう。
薬剤師がMRへ転職する前の注意点
薬剤師がMRへ転職する際に注意してもらいたい点があります。
以下では、MRへの転職活動を進める上での注意点を解説していきましょう。
MR求人は倍率が高い
MRはその年収の高さから、医療業界でも人気のある職業です。
しかし、MRの求人は特別な資格も必要ないので、応募へのハードルは低いといえるでしょう。
そのため、採用の倍率は上がり競争率は高くなります。
年収の高さだけで転職を決めない
MRは年収の高さが魅力ですが、それだけで決めてしまうのは危険です。
年収が高い企業は、ノルマが厳しかったり、残業が多いという落とし穴があります。
年収が高さだけで決めてしまうと、必ず後悔するでしょう。
転職先を決める際には年収の高さだけでなく、福利厚生や休日などもチェックして下さい。
転職エージェントなら非公開の求人も紹介してくれる
薬剤師専門の転職エージェントには、MRの求人もあります。
その中には非公開の求人もあるので、倍率も低めなことが多いです。
また、転職に関する相談もできるので、孤独になりがちな転職活動をプロの視点で手厚く、サポートしてくれるでしょう。
まとめ:MRは忙しいけど高年収
ここまで、MRの平均年収や仕事内容などについて解説してきました。
まとめ
- MRは薬剤師よりも高年収
- 年収は実力次第で1000万円以上も可能
- MRを取り巻く環境は厳しい(リストラ・求人枠減少など)
- MRは薬剤師経験を活かせる
MRは、能力が成果に直結するため非常にシビアな職種ですが、高年収と高待遇が魅力。
本記事でMRに興味を持たれた薬剤師の方、まずどんな製薬会社の求人があるか検索するところから始めてみましょう。
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