「薬剤師の転職が前より厳しくなってきたって本当?」
「そうは言っても、実際はまだまだ有利に転職できるんでしょう?」
ながらく「薬剤師不足で売り手市場」といわれ続けていた薬剤師業界。
しかし近年では、薬剤師総数は需要と供給がほぼ同等になってきており、将来的には胸腔が需要を大きく上回ると予測されています。
さらに、コロナ禍や医療費削減などの影響もあり、薬剤師を取り巻く環境は決して楽観視できるものではないのです。
今回は現状での薬剤師転職事情について説明し、転職が難航しやすい薬剤師の特徴や打開策を解説します。
この記事を読んで、困難な状況を打破する「勝てる転職」に活用してください。
薬剤師の転職が厳しくなったといわれる理由
薬剤師の転職が以前に比べて厳しくなったといわれる理由としては、以下の事情が挙げられます。
売り手市場の終焉
薬剤師の需要を供給が上回り、薬剤師優位の売り手市場から、企業優位の買い手市場への意向が顕著になってきています。
厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ」によると、令和2年時点で薬剤師の需要推計は320,000人、供給推計は325,000人で供給がわずかに多いのが分かります。
薬剤師の供給は今後も需要を上回り続ける見込みであり、転職困難な状況が予測されます。
(引用元:薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ|厚生労働省)
また、都市部など一部では現在すでに薬剤師供給過多な状況もみられます。
2018年時点での人口10万人あたりの薬剤師数は全国平均で190.1人ですが、徳島県(223.8人)、東京都(226.3人)、兵庫県(223.2人)などでは全国平均を上回る地域では薬剤師充足が起こっている可能性が高いです。
(引用元:平成30年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(全体版))
薬剤師の資格があればだれでもOKという時代は終焉が迫っており、就職できても容易には年収アップできないケースもあるでしょう。
転職難易度は決して低くはありません。
近年の患者受診控え
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて患者が受診を控える傾向が顕著となり、多くの調剤薬局でも報酬減の波が押し寄せています。
そのため、採用コストや人件費を削減する目的で薬剤師の求人数を減らしている薬局も増えているのです。
【新型コロナウイルス感染拡大後の、各業界での求人数の変化を教えてください】
(引用元:2021年の薬剤師転職市場はどうなる?新型コロナウイルスが中途採用に与えた影響は?|薬キャリ)
求人そのものが減っているため、薬剤師の転職難易度も高くなっています。
薬価改定・診療報酬改定
日本では急速な高齢人口増加が進んでおり、医療財源もひっ迫している状況です。
医療費削減を見据えた薬価改定・診療報酬改定による締め付けが厳しくなっており、調剤薬局の収益減へとつながる要素が多く存在します。
経営状態が厳しい状態では、採用側も薬剤師採用に慎重にならざるを得ません。
また、厚生労働省の「0402通知」を受けて薬剤師以外のスタッフにピッキング業務を任せる調剤薬局の増加や、IT化による業務効率改善の影響などから、薬剤師の転職難易度は今後も高くなっていく見込みです。
転職が厳しくなる薬剤師とは?
薬剤師の転職が厳しくなってきているなかでも、人材価値が高くて比較的ラクに転職できる薬剤師と、なかなか採用されず転職活動が難航する薬剤師とで明暗が分かれる場合があります。
転職が厳しくなる薬剤師の特徴を解説します。
スキルアップできていない薬剤師
特定診療科の定数調剤しかできない、正確なピッキングができない、一包化や散剤調剤で手間取ってしまうなど、スキルアップができていない薬剤師は転職活動で難航するかもしれません。
アピールポイントがないと、採用面接で価値を見出されにくくなるためです。
数年単位のブランクのある薬剤師や、調剤未経験の薬剤師はさらに厳しい状況になるでしょう。
認定資格はスキルアップの指標にもなるので、持っている方は最大限アピールしましょう。
実力に見合わない好条件を求める薬剤師
自分自身の薬剤師としての人材価値が未成熟であるにも関わらず、平均以上の高年収を求めたり、残業なし・土日休みなどの好条件を求めたりしすぎると、転職が厳しくなります。
年収の水準は地域によって幅があり、一般的には薬剤師が充足している都市部では給与が低めに設定されることが多いです。
自分のエリアの給与水準を把握して、自分の薬剤師としてのレベルに見合った給与設定を考えなければなりません。
かかりつけ薬剤師・在宅業務の経験ゼロの薬剤師
地域包括ケアシステムの実現に向けて、調剤薬局・かかりつけ薬剤師の地域貢献がいっそう求められています。
そのため、薬局経営の視点では対人業務の拡充・在宅業務への進出がほぼ不可欠なものとなっており、かかりつけ業務・在宅業務を任せられる薬剤師確保の必要性が高まってきました。
かかりつけ薬剤師経験者や、在宅業務に馴れている薬剤師は採用で有利になります。
一方、これらの業務ができない・やりたがらない薬剤師は、採用されづらくなるでしょう。車の免許がない薬剤師も、在宅業務で不利になる可能性があります。
「在宅未経験だが今後は積極的に行っていきたい」などの場合には、採用面接で具体的な意欲を見せると高評価につながりやすくなります。
転職を繰り返している薬剤師
転職歴が極端に多い薬剤師は、転職で不利になるでしょう。
薬剤師不足だった時代ならば事情は違うかもしれませんが、近年は企業優位な転職市場に変わりつつあるため、転職を繰り返す薬剤師は敬遠されるリスクがあります。
採用側にとっては、せっかく雇った薬剤師にすぐ離職されてしまうと、ふたたび採用活動を行わなければならず無駄が生じることになるからです。
また、薬剤師が勤務先薬局に1年以上在籍していなければ、かかりつけ薬剤師の要件を満たすことができません。
かかりつけ薬剤師の届け出は地域支援体制加算の算定にもかかわる重要なポイントなので、採用側は長く働ける薬剤師を求めるのです。
40代以上の薬剤師
40歳以上の薬剤師は転職難易度が上がります。
ベテラン薬剤師は人件費が高くなるため、採用側はコストカットの観点から積極的には雇いたがりません。
少ない求人に対して応募者が殺到すれば、採用側は人件費が安くてポテンシャルの高い若手薬剤師を優先的に雇おうと考えるのです。
短時間パート・派遣薬剤師
1日4時間・週3日・土日不可などの短時間パートや、高時給の派遣薬剤師は転職が厳しいです。
コロナ禍の影響で経営状況が悪化する調剤薬局が増えるなか、人件費削減のために派遣薬剤の需要が激減しています。
また、患者の受診控えで処方箋枚数が減り、正社員薬剤師だけで運営できる薬局が増えたためパートの採用も減ってきています。
とくに短時間パートは長時間パートにくらべて融通が利きづらいので、採用側にはあまり魅力的でない可能性もあるのです。
厳しい転職状況を打開する方法
「転職に不利な薬剤師の特徴」に当てはまる方でも、やりようによっては自分の希望を叶えて転職を成功させることは可能です。
厳しい転職状況を打開する方法を次に解説します。
研修認定薬剤師などの資格を取る
転職活動時のアピールポイントとして、研修認定薬剤師などの資格取得をおすすめします。
研修認定薬剤師は比較的かんたんに取得できる資格であり、かかりつけ薬剤師になる条件のひとつとしても働くので非常におすすめです。
<研修認定薬剤師の資格取得方法>
- 薬剤師研修手帳を入手(手帳は販売終了予定。令和3年9月をめどに電子システムへ移行予定(*1))
- 認定対象となる研修を受講。シールを取得
- 必要な単位数のシールを集めて認定の申請をする(単位初取得より4年以内に40単位以上、他条件あり)
(*1)参照:公益社団法人日本薬剤師研修センター
資格を持っていると自分のスキルアップに有用なだけでなく、給与を上げてくれる薬局もあるので、ぜひ取得を前向きに検討しましょう。
在宅業務・かかりつけ薬剤師を経験する
在宅業務やかかりつけ薬剤師になったことがないという方は、可能であれば今の職場で在宅などを経験してから転職活動を行うとよいでしょう。
患者宅への訪問に敷居の高さを感じるようなら、まずは介護施設での在宅業務から始めればハードルが低くなります。
未経験でも転職後にこれらの業務につきたいという場合には、採用後のかかりつけ薬剤師・在宅業務への就業意欲を積極的にアピールしましょう。
コミュニケーション能力を高める
薬剤師として働く以上、コミュニケーション能力不可欠です。
店舗スタッフ間だけでなく、患者・医師などさまざまな立場の人とそつなくコミュニケーションが取れるようにしましょう。
相手に関心を寄せて聞く姿勢を示し、分かりやすく話し、心を開いた雰囲気を持つよう意識づけることが大切です。
とくに、資格や管理職経験のようなアピールポイントを持っていない場合には、コミュニケーション能力の高さを十分にアピールする必要があります。
協調性が高くて場を円滑に回せる人は、現場で重宝されるでしょう。
転職サイトから情報を引き出す
無駄な転職を繰り返さないためにも、転職先の情報収集を十分に行いましょう。
薬剤師専門の転職サイトに登録すると、担当コンサルタントがついて転職をサポートしてくれるので情報収集にも有利です。
自分のスキルや経歴をきちんと棚卸しするときにも、担当コンサルタントのヒアリングが役に立ちますよ。
40代以降のベテラン世代の求人も、転職サイトなら効率よく見つけることができるでしょう。
転職が難航している場合には、地域の給与水準からかけ離れた高年収を求めていたり、自分の実績に見合わない好待遇を求めすぎたりしているおそれがあります。
その際にも担当コンサルタントに相談して条件整理や優先順位の見直しをするとよいでしょう。
10年・20年先を見据えたキャリアプランを作る
目先の雇用条件のよしあしで転職先を選ぶのではなく、まずは自分が今後どのような薬剤師として働いていきたいか真剣に考える必要があります。
10年、20年先まで自分の人生設計を描き、その目標を達成するためにはいつ頃までにどんな職場でどのようなスキルを積んでいけばよいのか逆算して考えましょう。
結婚・出産などのライフイベントも含めて、薬剤師としてのキャリアプランを検討しておくと転職先を選ぶときに軸ブレが起こりづらくなります。
キャリアプランが思い浮かばない場合には、転職サイトの担当コンサルタントにアドバイスを求めるのも有用です。
まとめ:難易度の高い転職を成功に導く!
薬剤師の転職事情は、患者の受診控えや医療財源のひっ迫、薬剤師総数の飽和などの影響で厳しくなっています。
薬剤師としての人材価値を低くみられてしまうと、転職が難航する場合もあるでしょう。
自分の価値を磨き上げ、情報収集を積極的に行うことが、転職活動の成功には不可欠です。
薬剤師業界の動向変化に精通した転職コンサルタントと連携して、転職を有利に進めましょう。
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